ベーゼンドルファーで思うこと - 2007.11.29 Thu
もう皆さんご存知のことと思いますが、ウィーンのベーゼンドルファー本社がヤマハに買収され、日本の総代理店だったハピコ社(日本ベーゼンドルファー)がこの騒動とは関係なく多額の借金を背負い破産しました。
日本のホール、各家庭に納められているベーゼンドルファーのピアノたちの管理、アフターフォロー体制、いっぺんに崩れていきました。
勤めていた私の後輩も即日解雇。
今は失業中。
この世の中ではよくある当たり前のことかもしれませんが、なんともつらい出来事です。
このピアノを弾いて虜になった方、一度は弾いてみたいと思っている方、このピアノの技術を知り、磨き上を目指す技術者。
それぞれの思いはどこへ・・・・
製造元、販売元それぞれが一新して、今まさに日本で大きく流れが変わっていくような気がしてなりません。
良いものを作っているだけで生き残れる時代ではないのはわかっています。
でも心あるものを作らないと見ている人は見ています。
感じる人は感じています。
明日は我が身と気を引き締めて見守っていきたいと思います。
ボールドウィンとお芋さん - 2007.11.26 Mon
1年ぶりの調律で、ちょっと時期が冬にずれてしまいました。
ちょっと遅くに調律の時期がずれたのが良かったのか、いつもと違う風景が待っていました。
お部屋に案内されると、そこには丸い石油ストーブ。
ポカポカと暖かいお部屋です。
調律どころではありません。
しかも時間は夕方。
ホクホクとあ、つ、く、て、は、な、せ、ま、せ、ん、、、
N様はまた冬の色んな工夫もされていました。
ピアノと一緒に撮った写真ですが、もう着なくなったセーターをクッションにして、涼しげな藤の椅子がパッと暖かく変わりました。
何とかわいい発想でしょう。
ドロップアクションです。
普通のピアノと違って、鍵盤の下にアクションがあるため背が低く、デジタルピアノくらいの大きさしかありません。
でもしっかりと存在を主張しています。
響板はこのサイズによくある、木目が真横に流れています。
これで結構な音量が出ます。
そして弦も一工夫、というより王道を行くやり方なのです。
ドイツにいたときにマイスターに教えていただきました。
弦をチューニングピンに正しく巻く巻き方は、弦の端をチューニングピンに多めに差し込み、先が出てしまった部分を巻く方向と反対に折り曲げます。
これが絶対弦がほどけてこない正当な巻き方で、でも今ではこのような巻き方をしているところはどこもありません。
手間と時間がかかることと機械化にむいていなかったのかもしれません。
倍音の秘密 - 2007.11.25 Sun
今日は連続工房企画を行いました。
アンコール企画として倍音の秘密、ペダルの秘密。
もちろん以前と同じことを行うのですが、全く同じでは能がない。
そこでいろいろと考えました。
また、普段の仕事で利用できるものは何かないかと常に見ていると、あるコンサートホールで音響の方が使っていらっしゃるPC用のソフトが目に止まりました。
なんとそのソフトは倍音を表示して見ることができるものだったのです。
単純に反応がある周波数を図形表示するものですが、一つの音源から倍音がいっぱい出ているのが見えます。
これは使えると思い、早速導入して試しますと、、、、
音叉の音、電子音、これらは倍音が含まれていませんでした。
もちろん基準として出る音ですから、いっぱい倍音があれば何が基準かわからなくなってしまいます。
そこでうたまくらならではの色んなピアノで倍音を調べてみますと、一般的に言われている
1.柔らかくて太い音→基音、もしくは2~3倍音が豊か。
2.硬くて明るい音→基音がしっかりしていて高次倍音が多い。
これらが目で見てはっきりわかりました。
倍音構成と音色の関係がある意味証明されました。
そしてなにより人間の声も倍音がいっぱいありまして、何とも面白い企画になりました。
ペダルの秘密もこの倍音をうまく利用する形での奏法など、うまく結びつけることができました。
また企画レポートを作成してアップいたします。
お楽しみに。
過去の企画レポート
http://www.utamakura.co.jp/piano/kikaku/pfkikaku.html
女性パワー - 2007.11.23 Fri
今日は勤労感謝の日。
働けることに感謝して、、、しっかりと働いています。
コンクールの仕事でした。
そこで単純に疑問に思ったことがあります。
この音楽の世界で男性のパワーは?
今日出場した28組中、男性は何人だと思いますか?
たったの2人。
ピアノだけではなく、声楽、ヴァイオリン、管楽器、いろんな部門がある中この人数でした。
ピアノなど昔から女性は多かったですが。
女性の世界のコンクールのような気がしました。
舞台袖などは終止艶やかでピリピリムード。
音楽をする男性人口が減って来たのでしょうか。
音楽で食べていくというのは非常に難しいことだと思います。
調律の世界でも、現在調律師を目指す若者のうち9割が女性。
ホールなどで音響、照明を担当する人も女性を多く見かけます。
昔は男の世界でしたが。
そういえば先日FMの仕事である音楽イベントの仕事をしましたが、その時のいろんなアーティストは見事全員女性でした。
ジャズヴォーカル、シンガーソングライター、、サックス奏者、ブラスセッション、、、
でもバックで伴奏しているバンドメンバーは全員男性でした。
良い意味で女性の進出かもしれませんが、いずれにせよ芸術で食べていくためには、環境がそろっていないと難しいのかもしれませんね。
時代を語ったピアノたち - 2007.11.20 Tue
人前で話すということに慣れていないものでして、冗談が受けず、真剣に話していることが受けてしまうなど、色んな反応がありましたが、基本はそれぞれの時代のピアノ、お国が違うピアノのそのままの状態をお伝えできたと思います。
完璧はありません。
その中で、それぞれの良いところをより引き出してやる。
結果、ピアノが語ってくれたと思います。
次回は来年3月18(火)20(木・祝)の予定です。
ベヒシュタイン K 今は無きモデル 1988年製 - 2007.11.19 Mon
この教室の曽和先生はうたまくら社の社員でもあり、音楽製作に携わっています。
ベヒシュタイン モデルK
ノイペルト スピネット
ザスマン クラヴィコード
西ドイツ最後のもので、今はもう生産されていない総アグラフのモデルです。
最高音まで一音一音独立しています。
これが最大の特徴でしたのに、それを数年前にスパッと辞めてしまいました。
響板の素直な響きを活かして奏でています。
写真手前側のピンの両サイドを見てください。
一番小さいモデルですが、通常ここはクロスを使う場所ですが、鹿皮を使用しています。
もちろん目的は耐久性です。
モデルに関係なく、廉価版ということでもなく最高級の材質で音作りをしていた時代のものです。
ほんの数年前のことですが、、、
しっかり作られています。
この大きさがまた、邪魔にならずいいんですね。
この楽器はバッハが好んで弾いていたと言われています。
もちろんピアノが生まれる前の楽器です。
鍵盤の奥に取り付けられている真鍮片で弦を押さえつけて音を出します。
40cm四方の大きさの響板なので、本当に小さい音です。
これらでバッハを弾いたときにはタイムスリップした感じです。
ザウター 納品 - 2007.11.17 Sat
無事お部屋に入って、納まったところを見ますと、もう何年も前からそこにあったかのように存在感を出していました。
写真を撮るのを忘れてしまいました。)
青い折り紙に「波と魚」を書いてくれました。
これは私が頼みました。
やっと書けるようになったひらがなで、し・ん・た・ろ・う。
そのときにこそ写真を撮らせてください。
しんたろう君と一緒に。
ピアノたちに時代を語っていただきます - 2007.11.15 Thu
今度の日曜と火曜にコンサートがあります。
うたまくらピアノ工房のピアノたちが、それぞれの時代を生きたピアノたちがもう一度息を吹き込まれ音楽を奏でてくれます。
今はその調整の真っ最中で、季節が変われば管理も変わり、音も変わっていく中、全部で11台の楽器を調律、調整していきます。
なかなか言うことを聞いてくれないものや、いやにお利口で反応がいいものなど様々です。
特に80歳のピアノなんかはいたわりつつ、でもしっかりと音が出て、タッチの反応が良くないとピアノではないので神経を使います。
また、当時の職人の技も見ることができて、日本の宮大工のような感じです。
人間の手で作られているというのをしっかりと感じられる楽器たちです。
それぞれの楽器が語ってくれるのを聴くと、本当にこういう楽器たちを紹介できて良かったなと思います。
それぞれのピアノの話、時代背景の話を含めてコンサートが始まります!
http://www.utamakura.co.jp/piano/jidai/jidai2.html
グロトリアンーシュタインヴェッヒ 110 1968年製 - 2007.11.11 Sun
そして、油絵もされて今度個展の予定もあるとお聞きしました。
うたまくらに来られて最後に見たピアノで「これだ!」と思われたそうです。
それがこのピアノでした。
天屋根がグランドピアノのように横に空くのですが、普通ヒンジでその芯棒を抜いて屋根を取るのですが、写真の金具に天屋根に取り付けられた金具の穴を差し込むようになっています。
そしてネジ止め。
小さいサイズでキャスターも無いことから、ヒンジを後ろに抜こうとする場合ピアノを手前にずらさないと行けないのが難点です。
その点こういうシステムならばピアノの移動無しでスポッと。
倍音が出やすい。
反面、弦設計的に下手なものは基音より倍音の方が大きくなっていて、音程が取りにくい。
一般的に小さいサイズが故に陥りやすい低音の基音の不安定さがあるのですが、このピアノは倍音の広がりのバランスが良いです。
ここまでしっかりと情報を出しているものも珍しいです。
お父様はミュンヘンのドイツ博物館で、しっかりと楽器コーナーを回られ勉強されたそうです。
ワールドカップも一緒に。
このピアノからどんどん広がっていく興味が素晴らしいです。
時代を語るピアノの響き - 2007.11.11 Sun
来週の日曜日18日と20日に、うたまくらピアノ工房と茶論で、すべての楽器を使ったコンサート
「時代を語るピアノの響き」
が行われます。
後1週間ですべての楽器の手入れをし直し、コンサートに向けての準備に取りかかります。
この企画は年間3回行われるうたまくら楽器フェアの、オープニングコンサートとして定着しています。
それぞれの楽器クラヴィコード、チェンバロからピアノまで、しかもピアノも120年前のものから現在の新品まで。
それぞれが時代を語ってくれています。
歌枕がその楽器に合った選曲をして、最高のコンディションでどんな音楽が語られるか、今から楽しみです。
是非お越し下さい。
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2007年11月18日(日) 14:00~16:00
2007年11月20日(火) 10:00~12:00
会 場うたまくらピアノ工房・うたまくら茶論
料 金一般¥3,000.- 学生¥1,500.-(税込み・お茶付)要予約
演奏・お話歌枕直美
楽器案内人荒木欣一
http://www.utamakura.co.jp/piano/jidai/jidai2.html
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ピアニッシモの限界 - 2007.11.09 Fri
今日はピアノリサイタルの仕事でした。
こういう仕事で三位一体が発揮できると思いもよらない音楽が生まれきます。
Y様は前回に続きオールフランスのプログラムで構成されていまして、フランス留学時のエッセンスを随所に散りばめられいました。
10数年仕事をさせていただいていますが、本当に気持よく、気配りが素晴らしく仕事をしていて本当に良かったなあと思える方です。
今回一つだけ注文をさせていただきました。
それは「PPの限界に挑戦してください!それがY様の音楽性を大きく広げると思います。」
リハーサル前にピアノでしっかり絵を描けるようにアクションを調整して調律してピアノをお渡ししました。
あとはY様が本番に気持ちよく弾いていただけるよう影で支えるだけです。
支えると言っても何をするわけでもないんですが、、、
本番直前にアクシデント発生!
ネックレスが壊れました。
お友達が「荒木さ~ん、直して~!」と。
お安いご用!
何でも直します。
本番直前のピアノのチェックではグリッサンドが弾きやすいように、そしてよりPPのコントロールができるように少しだけ手を入れました。
そして本番
ラモー
フォーレ
ドビュッシー
ラヴェル
最後は天から降ってくるような「月の光」で締めくくってくださいました。
PPの限界をこのピアノから引き出されたとき、Y様の今日の音楽をより輝かせました。
本当にお疲れさまでした。
素晴らしい時間でした。
ザウター 113 1974年製 完成! - 2007.11.07 Wed
基本的にはきれいな華やかさのある音色です。)
1819年創業
現在6代目の直系の社長です。
先日の楽器フェアでも来られていたそうです。
113cmというコンパクトが故にデザインが命です。
ザウターの響板、大変きれいです。
ここから弦楽器のような音が醸し出されます。
どうしてもこのページで音を言葉で表現するのは難しいので、どうぞ弾きに来てください。
企画レポート アップしました - 2007.11.05 Mon
お待たせ致しました。
10/28の「pp ピアノの音 ff フォルテの音の秘密」企画レポートをアップしました。
どうぞご覧ください。
http://www.utamakura.co.jp/piano/kikaku/071028/kikakuppff.html
当日お越しいただいた方、感想をいただいた方有り難うございました。
また、次回も是非お越し下さい。
お待ちしています。
姉弟でお手伝い! - 2007.11.04 Sun
というのも今年で小学5年のお姉ちゃんと1年の弟くんの、活き活きと元気な姿と愛嬌のあるやり取りが大好きです。
今月下旬に発表会があるということで、きれいな状態のピアノで練習したいと言われ伺いました。
お母さんの思い出でもあるピアノ、しっかりと手入れをします。
このお姉ちゃんと弟くんの働きが素晴らしい!
ケンカしながらきれいになっていきます。
この弟くんは恐竜博士で、いろんなことを教えてくれました。
ティラノサウルスの国別発見数、
恐竜博物館でのお話、
、、、
、、、
小学1年生で大人顔負けです。
頂いたサンドウィッチのラップで折り鶴を折ってくれました。
また来年伺います!
ミッシャ・マイスキーの椅子 - 2007.11.01 Thu
今日はミッシャ・マイスキーの60歳還暦記念リサイタルの仕事でした。
ピアノは娘のリリー・マイスキー(20歳)。
娘のリリーは二十歳なのにかなり落ち着いて見えました。
ミッシャ・マイスキーの今の奥さんはモデル出身とかで、小さいお子さんもいるようです。
う~ん複雑そうですね。
リハーサルも親子だからでしょうか、けんかのようにも見え、言い合っています。
お互い意思は強そうです。
でも演奏は息もピッタリでさすが。
ところで、ミッシャ・マイスキーのコンサートのときの椅子をご存知でしょうか。
肖像権とかで写真を撮れなかったので、文字で表現しますと、ステンレス製の銀色丸椅子で背もたれが、ステンレスの細い棒でチェロを型どって作られています。
日本のファンのある会社の社長さんがプレゼントしたところ、大変気に入られてそれをコンサートに持ち歩くようになったとのことです。
今では自宅も含め30脚持っているとかで、マネージャーさんが「これ重いんだよね、ヨーロッパでは自家用車で移動してるからいいけど、日本では持って運ぶんだよ、、、。」
「2年ぐらい経つと溶接部分が割れてきてピキッ、バキッ と本番に鳴るので2年ごとに作ってもらっているんだよね。」
大変なことです。
ピアニストでも稀に、マイ・チェアーを持ってくる人はいますが、さすがマイスキー持っている数も半端ではありませんでした。
どこかのコンサートでマイスキーを見たときにはステンレスの重たい日本製の手作り椅子も見てみてください。
写真を撮ったら警備員が飛んでくるかも。