残念なこと 続き - 2007.10.07 Sun
何週間か前にヤマハの新品グランドのクレームがあったお客様の件で動きがありました。
『調律師としてすべきこと、判断すること』
今回はこのことをすごく考えさせられることとなりました。
お客様はまず
1.弾きにくい
2.タッチの不揃い
3.鍵盤が重い
を言われていてそれを見に行った結果、かなりの狂いを確認してこの状態があまりにもひどいと感じて保証期間内でもあるので購入先の販売店で一度確認してもらった方が良いです、とお伝えしました。
すると、技術者と営業の方が訪問されたそうで、そこから私宛に電話がかかってきました。
「あなたは調律師としてこの状態が恥ずかしくないのでしょうか?しっかり調整をしてから重さを測るべきではないのでしょうか。」と販売店調律師(30数年の経験者ベテラン調律師)。
「私が手を加えてしまうと現状がわからなくなるので、あくまでも今の状態を見ていただいた方が判断できるとしてそのままにしました。そして、過去に他の支障の件で問い合わせたところ、ヤマハの技術者以外がさわったものは保証できません、と言われたのでそのままお見せすることが良いと判断したわけです。」
このようなやり取りがあって、最大のポイントの鍵盤の重さはどうなっているのかを聞きました。
「ヤマハでは公表していません。また、私も知りません。大体55~60gに納まっていればいいと思っています。この一件があって以来ピアノを30台近く測っていますが、同じような感じです。ところでスタインウェイはどのくらいですか?」
「・・・(このかたの基準は?今まで他のピアノへの興味は?)
スタインウェイは小さい機種は47gで大きいものは47~52gです。」
「軽いんですね、もっと重たいのかと思っていました。
とにかく見解の違いですね、このピアノ狂いかたは普通です。ヤマハの範囲内です。」
「わかりました。」
でも最後に救われたのは
「同じ技術者としてお客様の意見が一番だと思います、それに向けての良くしようとする技術者としての意見だったと思いますので、あなたのとった行動の意味はわかります。また、電話では顔を見て話しできないので私としたら本意ではありません。」
と販売店調律師。
そして、荒木さんに調整してもらってくださいと何もせず帰られたそうです。
今回の件でわかったこと。
1.鍵盤の重さの基準が無い。(現場ではあったとしてもこれくらいという曖昧なもの。でも設計段階では絶対あるはず。そう思いたいです。)
教訓
新しい国産ピアノへの調整の提言がより難しくなりました。
手を加えれば絶対良くなるということはわかっていますが、基準をどこまでのレベルに持ち上げるかピアノの状態で変わります。
それを言い続けていかなければとも思っています。
お客様の立場に立って考えているのはどの技術者も同じだと思います。
でも何がお客様にとって良いことなのか、大変考えさせられることになりました。
● COMMENT ●
トラックバック
http://arakipiano.blog43.fc2.com/tb.php/101-67f12d23
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)