「オリジナル」と言う言葉のマジック - 2008.03.25 Tue
今回ピアノの企画が終わった後に、大反省会を行いました。
今までいろんなピアノを修理、調整してきてそれぞれの最高というものを引き出してきたつもりです。
しかし、今回また新たな発見、というか原点に帰らなければいけない、ということを思い知らされました。
それは、
オリジナル部品をどこまで残すか?
良い音を出すためにはそのオリジナル部品がどこまで必要か?
自分たちがオリジナルで良いのでは?
ピアノには付いているオリジナルの部品というものがあります。
年数が経ったピアノを修理した際、もしくは調整した際、その部品の状態は、今まで使われていた環境で大きく左右されています。
つまり、フェルト類などが
1.湿気た状態
2.かなり弾き込まれて消耗している状態
などがあります。
そのフェルト、特に弦を打つハンマーの状態を見極めるのは非常に難しいです。
1.は
・大きさはたっぷりとあるのに湿気でぶよぶよになっていて、発音が悪い
・音が出にくい
・音が丸すぎる
2.は
・しっかりした音は出ますが、うるさすぎて割れている
・ハンマーの消耗で肉厚が無いため、音にボリュームが無い
・音質が平べったい感じになっている
どこまでオリジナル部品を残し、状態よく音色を作るかが技術者の腕にかかってきます。
また、特に日本では部品がオリジナルでないとそのブランドと認めない、ということを強く言われている傾向にあると思います。
「オリジナル」神話ということになるでしょうか。
極端な例かも知れませんが、
4年ほど前にアメリカに行った時、スタインウェイのあるニューヨークで、修理工房の見学に行きました。
そこでは乾燥地域アメリカ特有の木材割れの修理が多数有り、特に、響板、ピン板など総取り替えなどは日常茶飯事ということでした。
でも、響板をスタインウェイから買おうとすると、良い響板は工場で使われるために、選ばれなかった悪いものしか送ってこないとのことで、しっかり良い材質で作ってくれる響板製造会社から購入するということでした。
ということは、スタインウェイのオリジナル響板ではないということです。
スタインウェイ社の響板の音はしないということですが、平気でスタインウェイとして販売されています。
また、お客様もそれを承知で購入しています。
今回オリジナルハンマーで1年以上様子を見てきたピアノがありました。
修理したては部品がどうしても落ち着かないため、そのピアノ本来の最高のものが出ていないということが多々あります。
時間をかけて落ち着かせるということで、鳴ってくる、音の厚みが出てくるまで待ちましたが、結果出し切れませんでした。
最初の判断を誤ってしまいました。
やはり潤いのある、ボリュームのあるハンマーに取り替えておくべきでした。
ピアノがそう語ってくれました。
と、うたまくらチームで判断してもう一度楽器の最高を出すための作業を行います!
自分たちのオリジナルで勝負です!
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