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師匠の死 - 2008.02.27 Wed

突然の師匠の死が電話で知らされました。
この道に進んで、最初にピアノの音作りを教えてくれた方でした。





まだ、訳が分からない調律学校の学生の頃、イタリアに行くことが決まってその訓練と研修を兼ねて半年浜松のピアノ工場に行きました。
毎日が学校で習ったことの無いことばかり、その中で「整音」という音作り実技を手取り足取り教えてくださった最初の方が、O師匠でした。

O師匠はヤマハの工場で整音の責任者をされていたこともあり、有名なピアニストの目の前で作業を行い評価されたこともしばしば。
素早い手作業、仕事のきれいさ、道具の配置、など当時の私には魔法のような作業でした。
当時のピアノメーカーで整音をしっかり行っているところはあまり無く、小さいメーカーだからこそこういうところでの勝負になる、自分が活かされるということで、この工場に来られ作業されていました。

教えていただく中で、慣れというものがあります。
やり方はわかっていても、体で覚えない限り結果が出ません。
整音の作業の中に、ハンマーに針を刺して、繊維をほぐし音色を整える作業がありますが、これが大変難しく、なにせ硬い石のようなフェルトに針を入れるのですから勢いが無いと入っていきません。
何度ハンマーを支えている左の親指に針を刺したことでしょうか。
針が骨まで行ったこともありました。
血が出てハンマーが赤くなると商品になりません。
いろいろ注意されながら、音がそろっていく楽しみをそこで覚えることができました。




また、特別に一般家庭調律にも同行させていただくことがあり、お客様との楽しい会話、作業のポイント、続けていくことの夢など、調律師とはこういうことなのかという教科書のようでもありました。



思い出せばまだまだ出てきますが、絵を書くことが大変お好きで、いろんなものに出品されていました。
そういう芸術的な才能をお持ちの方だったからこそ、最後にピアノに命を吹き込むようなお仕事ができたのかと思います。



誰にも知らせずに葬儀を終えたということらしいのですが、師匠の奥様が手帳の最後に私の名前を見つけ知りあいに伝え、連絡をいただいたのですが、覚えていてくださって光栄でした。

O師匠、本当に、本当にありがとうございました。





安らかにお眠りください。

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Author:arakipiano
38年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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