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難しい!わからない! - 2011.06.29 Wed

今日は日本で一番難しいと(先輩が)言われるピアニストの仕事でした。
演奏は絶品で、ベートーヴェンソナタ全曲演奏会なのでオール・ベートーヴェンですが、今までこんなベートーヴェンは初めてでした。
渋く、素晴らしい!

通常夜の本番なら、お昼から調律に入るのですが、朝10時入りで調律が終わり次第リハーサルが始まりました。
昨年秋に仕事をさせていただいた時も、大変でした。
1時間おきに要求が出て、それに答えるべく作業を施していく、自分の想定外のところへ行ってしまうと、不安のなにものでもありません。

今日の最初の要求は
「自分の音が聞こえすぎます。何とかして欲しい。」
ホールの人と相談して、ピアノの位置をずらしてみることにしました。
ほんの20cm動かしたかどうか。
「低音のボリュームが無くなった感じです、前の状態の方が良かったです。」
また元に位置に戻します。

1時間ほど弾いた後、次の要求は、、、




「全体的に音が硬いです。もっとなめらかな音にしてください。」
せっせと作業を行い、お渡します。
また1時間ほど弾かれ、次の要求です。

「この一つのタッチが両サイドと違って、角張っている感じです。揃えてください。」
う~ん、これは部品の形状による誤差から来ているような気もするのですが、、、とは言えず、「わかりました。」と作業に入ります。

全体の音の感じが揃ったので、次が見えたのでしょう、「いくつかの音の細かいバラつきを直してください。」

リハーサル終了まで何度も行いました。
やっとこれで本番だ。

うまく鳴ってくれ!
と祈りつつ、始まりました。

すると、曲の間で戻ってこられたときに、「鍵盤が汗で滑るので、何か拭くものを持っていませんか?」
家庭調律で、子供さんにウケを狙い持っているドラえもんの布があるけれど、いくらなんでもわかってしまう、、、。
もぞもぞしている時間はありません。
ちょっと汚いけれど他の布を見つけ渡しました。

良かった無事始まった。

次は休憩になります。
終わって戻ってこられて開口一番「鍵盤が引っかかるのですが、見ていただけませんか。もしかしたら私のタッチのせいかもせれませんが。」
はぁ~、これはお客様の目の前で、アクションを出せということなのですね。
ざわついている休憩中のステージに行き、アクションを取り出すと、あちこちからオゥーという唸り声が、、、。
珍しい光景ですよね。


引っ掛かりの原因はつかめず、鍵盤をしっかり拭いて、調律の手直しをして戻ってきました。
大丈夫だろうと思い、確かめたことをお伝えし、後半に入って行きました。

ベートーヴェンを聞きながら、次は何を言われるのだろうと、こんなに不安にかられたベートーヴェンはありませんでした。
耳が聞こえなくなったときの彼よりは、比べ物にならないと思いますが。

アンコールも無事終え、コンサートは成功しました、、、?

舞台袖に帰って来られてから、「次回は2台の中からピアノを選ばせてください。前回(去年)よりかなり変わった感じがしましたので。」
これって最初から言ってたことでしたやん。
納得いく方で弾くために予め試弾するって。



ということは今日は満足されたの?

難しい、わからない。


次回は来年の2月です。
頑張ろっと。

● COMMENT ●

納得or満足?

お話から、演奏者vs調律師の真剣勝負の一面が見えました。過酷なお仕事ですね…。ホールのピアノっていろいろな演奏者の要望を聞いて調整していくわけで、どうなっちゃうのかな?と思いました。

ひやああ

行ってよかったあ…そんなすっごい事になってたんですね。
アクション出てきたときはさすがにビックリしました。
なかなかかぶりつきな位置で聴いてたんですよー。
客席にはどう聴こえてたかレポりましょっか?
…メールの方がいいのかな?いらないか…(汗

ともあれ、お疲れ様でした!!

Re: 納得or満足?

うさま
そうなんです。ホールによっては技術者の手が入りすぎて、お釈迦になっているピアノも結構あるのです。
ピアノはピアニストが壊すのではなく、調律師が壊すのです。
知らないホールのピアノは結構苦労します。

Re: ひやああ

Nさま
是非、この場面でレポください。
観客側の視点がわかって嬉しいです。とにかく長い一日で疲れ果てました。体力より、神経ですね。
でも私は演奏は素晴らしかったと思います。言うだけのことをされているので、こちらも真剣になります。

観客側レポ

※この日は特に耳の調子がよくなかったので割り引いてください※
ステージ向かって左ブロックの右端、前から2番目に座ってました。
第一印象は「距離が近いのにピアノの音が直接耳に入らない」。一旦ホール内に響いてから耳に届くという感じです。まるでソフトペダルを踏んでいるような。アクションの音も聴こえませんでした。
全神経を集中してピアノを使っていろんな楽器を指揮なさっているかのような錯覚に陥りました。ストリングスだったり、管楽器のソロだったり…1台のピアノからこんなに多彩な音がするものなのですね。スタインウェイの底力を見たような気がしました。特に低音の響きがとても豊かで心地よかったです。
打鍵時間がとっても速いと思いました。例えていうなら「ハンマーが弦を打つと、もう鍵盤から指が離れている」という感じです。タッチが浅いわけではなく、鍵盤が降りた後の動作が速いというか。ピアノに影響ないのかなと思っていました。
休憩後は、意外にミスタッチが増えておられました。私の方が限界だったみたいであまりちゃんと聴けてない気がしますが…中音域のF♯をオクターブで弾かれる時、うまく鳴っていないような、変な感じがしました。他に妙な音がいろいろ聴こえてきたのですが、それは多分私のコンディションの問題かなあと…。
私も素晴らしい演奏だったと思います。しかも、良い意味で完成されていないので、これからもますます上達なさるのでは。次回も是非行きます。

Re: 観客側レポ

Nさま
詳しいレポートありがとうございます。
いつもの視点でないところからのご意見、参考になります。

> ステージ向かって左ブロックの右端、前から2番目に座ってました。
> 第一印象は「距離が近いのにピアノの音が直接耳に入らない」。一旦ホール内に響いてから耳に届くという感じです。まるでソフトペダルを踏んでいるような。アクションの音も聴こえませんでした。

これはあまりにも前過ぎるため、また鍵盤側のため、ピアノから出てくる音は上からは天井に向かっていき、下の音はステージにあたって跳ね返り、上に飛んでいきます。
音を聴くということであれば一番聞こえにくい場所になると思います。
純粋に音だけを楽しむのなら、後ろの座席がこのホールは良いかもしれません。

> 全神経を集中してピアノを使っていろんな楽器を指揮なさっているかのような錯覚に陥りました。ストリングスだったり、管楽器のソロだったり…1台のピアノからこんなに多彩な音がするものなのですね。スタインウェイの底力を見たような気がしました。特に低音の響きがとても豊かで心地よかったです。

ホール自身の響きが長く、豊かなのでペダリングが難しいと思います。
でもプロはそこはいろんな場数を踏んでいるので、一瞬のうちに、合うやり方を見つけてしまいます。

演奏後の率直な感想を本人から聞いていないので、怖いのですが、今日東京で同じプログラムで行っているので、そこで大阪の評が出ているかもしれません。
わかったらまたお知らせします。(良いことだけ、笑)


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Author:arakipiano
32年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
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