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「これは、こんなもんですよ。」の怖さ - 2011.07.13 Wed

最近、伺ったお客様のお宅で連続して聞いた話です。
自分のピアノに何か疑問を感じて、不都合を感じて、調律師に聞いたら返ってきた言葉が、
「このピアノは、こんなもんですよ。」
「この症状はこんなもんですよ。」
と言われて何もしてくれなかった、ということです。

目線の違いでもあるかもしれませんが、調律師の仕事は、調律師の感覚でピアノを見た後、最終は弾き手視点で見ないととんでもないことになります。

弾き手にしてみれば、何か違う、何か不都合を感じると思って解決して欲しいのに、その不都合が普通のことだとプロに言われたら、元も子もないということです。
もっとも、全く見当違いのことを言っていれば別ですが、一回じっくりと言われた言葉を噛みしめれば見えるところがあります。

今回の具体例は




グランドピアノをお持ちのM様(ピアノ愛好家)がピアノを買ってすぐ、左のソフトべダルの音が気に入らない、ショールームにあったものは良かったのに、私のピアノの音は何かが違っておかしい、と思われました。
何がどう違うのかはわからないので、購入後から来ているメーカーの調律師に来てもらい見てもらいました。

ピアノを弾いて、ペダルを2~3回踏み変えて試弾し言われた言葉は
「これはこんなもんですよ。音色は変わるし問題ないです。」

この調律師の感覚では本当におかしくなかったのかもしれませんが、一連の作業対応を見てM様の感じたもう一つの感覚、「この人はピアノを大事に思って仕事をしていない。」と思われたそうです。
「こんなもんですよ。」・・・・・
この言葉を最後に調律師に対しての信用を無くしたとのことでした。

ソフトペダルでの音色の問題
音色が気に入らないということはハンマーの弦に当たる場所が悪いということと、その当たるところの音色が揃っていないということだと思い、約3mm横に動く鍵盤、ハンマーを細かく踏み分け、気に入ったところの音色を探しました。

この気に入ったところは決して同じ感覚ではないため、私も同様に気に入ったということではありません。
好みの問題なので、M様の気に入ったところにセッティングしました。
たったこれだけで、顧客を失ってしまったわけです。


もう一つ。
これもペダルに関してでした。
あるメーカーの自動演奏ピアノを購入したH様、自動演奏が目的だったわけではなく、そのピアノの音色が気に入って購入されたとのこと。
生のピアノを十分楽しみたいということでした。

しかし、生のピアノの時は普通に弾けないといけないわけですが、右のダンパーペダルが重すぎる、他のペダルと比べても戻りが悪く、重いとのことでした。

自動演奏の構造上ペダルの突き上げ棒にペダルを動かす機械が付いています。
私はこれが原因だと判断して、これは私の専門分野ではないため、自動演奏分野の技術者を呼んでください、とお伝えしました。
しっかり原因がここだとわかったところを細かく説明して、来る技術者にお伝え下さい、と話しました。
そして、付け加えたことは「これはこんなもんですよ、と言われたら、私に電話してください、説明します。この言葉が一番危険です。」とお話ししました。

購入した楽器店で手配をしていただいたのが、メーカーの技術者と調律師でした。
しかし、その前に下見に来るということでメーカー側が勝手に近くの調律師を頼んでしまいました。
調律師で直ればよし、と思ったのでしょう。
これが間違いでした。

来た調律師はペダルを踏み
「ペダルが戻ってこないわけでもないし、音が伸びつづける訳でもないし何が不満なのかわからない。自動演奏付きのペダルはこんなものだ」と言ったそうです。
私が伝えた内容を細かく説明されたら、やっと自動演奏部分のカバーを空けて、油をさしたりと対応したということですが、やはり自分は技術者だから機械のことはわからない、と振り出しに戻ったそうです。


私もよく使う言葉かもしれません、「これはこんなもんですよ。」
立て続けにこの言葉への怒りを通り越したものを感じました。
反面教師として、しっかりと勉強させていただきました。
調律師の言葉を信じてはいけません。
自分の感性を信じましょう。
調律師はその感性についていく努力をします。

● COMMENT ●

こんなもんですよ…

技術者の良し悪しが判断されるリトマス試験紙みたいな言葉かも。
自分も気を付けなければ!業種はまったく違いますけれども…

いっぱい。。。

こんな言葉や対応を某メーカー調律師さんから、散々聞きましたね(笑)
同じように…楽器に対する愛情は感じなかったですし、
こちらの「愛情や愛着」も理解されなかったと記憶してます。

そしてこんな対応の中、言葉を飲み込んでいるユーザーも
いっぱいいるんだろうと思います。

悲しい経験

 調律師という職業がどのように思われているか考えると、悲しくなってきます。
 私の前任者が短時間で、雑な仕事をしていたので、最初、お客様は調律師に不信感を持たれていました。訪問すると歓迎されてない上に、塩をまかれそうな・・・・。
 当時は、信じてください。という気持ちを仕事にぶつけていました。技術はぜんぜんないのに、気持ちだけ・・・笑えますよね。でも、クレームや要望に応えるべく奮闘していると、何か少しは身についてきたように思います。
 こんなもんです。と言って逃げたくなる弱い自分がいるのも事実ですが、どんな問題でも解決できるよう、セミナーに参加させて頂きたいと思います。
 
 
 
 
 
 

Re: こんなもんですよ…

うさま
この言葉をお客様から聞きながら、気をつけようと思って、行動しています。
昔の調律師さんは、職人のようなところもあり、「そんな弾き方じゃあかん。」「お前にこのピアノを弾く資格はない。」などと言われた人を知っています。
とんでもないことだと思いますが、ユーザーを育てるのも技術者だと思うので、言葉を選び、通じ合えるまで会話をします。
それを技術に変える、なかなか難しいことです。

Re: いっぱい。。。

sewingmamaさま
私も気をつけています。でも、とっさに出てしまったときは、ご指摘下さい。
誠意ある仕事は言葉も、行動も比例しますよね。
そしてピアノから伝わってくる、読み取れるメッセージを汲み取りたいと思います。

Re: 悲しい経験

Yさま
こんなもんです、という言葉は最終究極の言葉でしょうね。
お互いが納得した中での、言葉。
裏付けとなる技術を磨くことは素晴らしいことだと思います。
よろしくお願い致します。

Re: こんなもんですよ…

背景に、納得してもらうことよりも諦めてもらうことを優先している意識があるのかも?

仮に、「調律師だから機械のことは分からない」は正だとしても、
もし、車のアクセルペダルとブレーキペダルの踏み心地と戻り加減が同じだったら、
誰しも「こんなもんですよ」とは言えないし、言わないだろうな~とも思います。

気をつけます

良く使う言葉かもしれません。無意識に言ってしまってる時が、多分ありますね。ピアノのセッティングは私には出来ないですが、音作りに関わる者として気をつけます。

Re: Re: こんなもんですよ…

うさま
そうですね。おっしゃるとおりかもしれません。
これ以上やりたくないので、ややこしくなる前にここで諦めてもらおう、という意識があるかもしれませんね。
もちろん経験者が語るですから、私にも苦い思い出があります。
言葉を選ばないといけないですね。
そして誠意です。

Re: 気をつけます

katayamaさま
ご訪問ありがとうございます。
目に見えない感覚の部分でのやり取りは難しいので、こんなもんですよ、という言葉が出やすいのかもしれません。
感性豊かに、言葉にも誠意を持って。これでいきたいです。


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Author:arakipiano
32年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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