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セミナー ピアノのお部屋のサウンドデザイン入門 - 2011.08.07 Sun

ピアノ工房月間の第4弾のセミナーです。

このセミナーを思ったきっかけは、調律に伺ったときに調律師としていろんな相談を受けます。
その中で多いのが、お部屋の響きです。
「ピアノの音をもっと抑えて欲しい。」「もっと響くように調整して欲しい。」「防音室にしたけれど圧迫感があって苦しい。」

お部屋の音響の前にピアノに対しての注文を受けることになるのですが、ピアノだけに原因があるとは思われない環境に出くわします。
これらをどうアドバイスするかが、経験でしかものが言えなかったのですが、物理的に立証できるものは無いかと昔から考えていました。
ある音響デザイナーとの出会いが縁で、色々と分からないところを教えて頂きました。

昔にもっと物理をやっておけばよかったと悔やまれます。
理系が嫌で、この世界に入ったのに、やはり必要だったとは。
でも逆に勉強できるきっかけとなりました。

当日は調律師、レスナーの方々にお越しいただき、いろんな実験も含め盛り上がりました。
P8070007.jpg

硬いものへ声を出して反響を聴く
柔らかい布団ではどうか。




部屋の響き及び音の聞こえ方がユーザーにとって良くなることを考えるのですが、それは誰にとっても良くなるという事ではなく、その部屋を使用するユーザーにとって良くなるという事で、誰にでも当てはまるものではないというところが、最後に人間の感覚でアドバイスできる部分です。


 サウンドデザインを行うメリット
1 最適な残響時間と音の方向性を整える事により、楽器の特性を引き出せる。
2 耳にやさしい環境を作る事により長時間の演奏において耳疲れをしない。
3 微妙なペダリングやタッチを聞き分ける事が出来る。
4 大きな音をうるさく、やかましく感じない。

これらが妙に納得する内容なのですが、これらがパーフェクトになっているところはほとんど無いと言ってもいいでしょう。
コンサートホールでさえ、いろんな注文が出るのですから。

ポイントとして、残響と音の跳ね返りです。
響きが多いというのは室内の床・壁・天井からの跳ね返りが多いという事で、音同士がぶつかりあいます。
これはできるだけ避けたいです。


また、以前から確証が無かった、ピアノのフタを開けた時と、閉めたときには本当に音量は変わるのか?ということも皆さんの目の前で、実験してみました。
P8070010.jpg
音圧を図る測定器で数m離れたところでdBを図ります。

天屋根を開けて pp,ffを弾きます。
天屋根を閉めて pp,ffを弾いてそれぞれを測定すると、、、

また壁越しにも同じ内容で試してみました。

そして、弾き手の感覚を知るためにも、弾き手の頭の上で上記条件で測定しました。


大変面白い結果となりました。
経験値が間違ってなかったということと、それを実証できたことによって、これからも自身を持ってアドバイスできます。

良い演奏者と良いピアノ技術者、良い楽器が揃わないと良いサウンドデザインは難しく中途半端に終わってしまうと思います。
技術者はピアノをより良い状態へ持っていく、置かれる環境のアドバイスをする努力と啓蒙をしなければいけないということを再確認しました。
調律以外の音色、タッチを整える作業です。




音環境のための工夫

良いピアノの音を保つためにはどうしたよいか?もしくは、気持よくピアノを弾ける環境は?

1. 蓋を開けて弾く。
蓋を開けて弾いても閉じていても実際の音の大きさは、ほぼ同じ。
音の聞こえ方が異なるだけ。
一番音が聞こえる状態で、コントロールしやすい状態で弾いていただきたい。

2. ピアノのメンテナンス。
調律、湿度、温度には気を配って下さい。
これはユーザーがしっかりと行っていただきたいことで、ピアノも喜ぶことでもあります。

3. 良い演奏者、良いピアノ技術者、良いピアノ
ピアノを良好な状態に保てる・演奏者の好みを反映できるよいピアノ技術者によりピアノの環境を作る。

4. 室内音響。
響きすぎる部屋、こもりすぎる部屋、一定の音が共振する部屋は避けたいです。
自身の目標とする響きに向けて作っていきたいです。

5. ピアノの下には何も置かない。
これがなかなか難しいところです。
ピアノの一時反射音は大変に重要です。
下に物を置けば素直に音が跳ね返りません。
カーペットは低音から高音までをまんべんなく吸音してくれません。
かなりくせのある偏った響きになります。
そしてなによりカーペットを敷いても音の大きさは変わりません。

6. 吸音について。
偏った響きになると逆に弾きにくくなります。
吸音材も考えて置かないと、鳴らないために強いタッチになり、断線の原因にもなります。

7. 天井と床。
どちらか一方を響かせましょう。
フラッターエコーが出ないようにするだけでもかなり気持ちよく弾けるはずです。


セミナーが終わってからの皆さんの体験談や、雑談のほうが面白かったかも知れません。
正解がない世界ですから、人間の感覚がより研ぎ澄まされて、敏感になればより素晴らしい環境作りができると思います。

そういうアドバイスが出来るよう技術も含めての向上を目指しています。


次回は最終回、ハンマーのニカワ付実演です。
これからは修理の時代、たまたま今朝のテレビでTBS放送系のがっちりマンデーで「修理の時代」でがっちり!
というのをやっていて、ピアノも出てきました。
でもそこは工場のようなところで、ピアノと向き合っているようには見えませんでした。(しかし年商30億)

小さい企業、個人技術者ならではのやり方があります。
小回りが効く修理、要望に対する対応、技術者からの新しい提案が必要になってくる時代になったと思います。

技術者はもちろんレスナーも見学に来られます。
面白い研修ができそうです。
興味のおありの方は是非!

● COMMENT ●

うっうっうっうっ

行きたかったデス…(T^T)

Re: うっうっうっうっ

Nさま
是非次回またやりましょう。
初めてはなんかいろいろと難しくて、次から乗っていけると思います。

ピアノの下と裏

初回セミナーならではの緊張感、試行錯誤感が伝わってくるレポートですね!
ピアノの下には何も置かない、ということは、アップライトも壁とピッタリというのはよくないのですね。
(昔の冷蔵庫みたいに)壁から10cm離すとか?

Re: ピアノの下と裏

うさま
もちろん、壁にピッタリでは音が逃げません。
もしくは前の板を外すという手もありますよ。
こちらは自分に音が帰ってきますから、最高です。


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Author:arakipiano
32年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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