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工房月間最終日 技術研修 - 2011.08.14 Sun

本日で、うたまくらピアノ工房月間が終わりました。
まだまだ暑い夏は続きますが、外の暑さにも匹敵するくらいの参加者の熱い想いが伝わる研修となりました。

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ハンマー交換、ニカワで接着。
なぜこのような内容になったかというと、これから先どんどん、ピアノが売れない時代になっていきます。
反面、今まで売れていたピアノの修理の時期がやってきます。
ピアノが売れなければ調律は無いわけで、現存するピアノだけで調律師は食べていかなければいけません。
グランドピアノが200万円する時代、ピアノ講師も、買い替えなのか修理なのかという選択肢が増えていくと思います。


現場の声から、今回は是非ハンマー交換の手順、やり方を!ということで扱いの難しいニカワを使っての技術研修となりました。

調律師だけでなく、講師の方も興味を示して下さり、どのように作られているかを目の当たりに見ていただいたことは、非常に有意義だと思っています。




アッセンブリー(ハンマーとハンマーシャンクがすでに接着されている修理部品)を購入して交換するということもあるのですが、接着をして初めて、どのように取り付けられているかが見えてきます。
また、アッセンブリーは作られた時代で微妙に違う部分は、カバーできていないため、後の修正がかなり大変です。
今回手間はかかりますが、ハンマーを直に手で接着する方法を行いました。

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準備した内容は、
低音:交換が完成。
中音:交換の実演
高音:オリジなうハンマーを取り除き、今から取り付ける新しいハンマーシャンクの打撃音の揃え方、ハンマーヘッドの加工の仕方

これらを流れで見て頂きました。

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実際に聞いてみるとコツコツという音の音程差を聞き分けるのはかなり難しいです。

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でもやってみて、出来上がったものの最低音と最高音はかなりの差で、できています。
つまり、木の密度の違いで、かなりの音程差が出るということをみて頂きました。

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サンダーを使ってのハンマーテール加工です。
穴あけから、テール加工を業者に出すことも可能ですが、より自身で細かい細工ができるメリットがあります。
ハンマーの重さなどを考慮して厚みを変えたり、鉛調整を見込んで、操作したり。

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サイドを加工したハンマーです。

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どのようにRを付けるのかの説明

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オリジナルハンマーの隣に、基準を作ります。

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交換するところを熱心に見入っています。

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ニカワでの接着は非常に早く固まるため、スピード勝負です。
ゆえに、早く結果がわかり、対応も早くできます。

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中音セクションの接着時間は20~30分。
ここまで2時間をずっと休憩なしで見ていただいたので、ちょっとコーヒーブレイクを取りました。
皆さんのいろんな裏情報の交換の場ともなり、ハンマー付より良かったのかも。

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今回はまだ乾ききっていないニカワですが、動かない状態にはなっているので、余ったシャンクを切り落とします。

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取り付けが、少しでも甘いと、後の作業の、アルコールランプでハンマーの傾きを直す作業が多くなってしまいますので、どれだけ修正の無いものを行っていけるかが、タッチの安定度にも影響を及ぼすものだと思います。

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全てが終わり、談笑の時間です。
ここでアイディアを頂き、次回の研修に活かしたいと思います。

今の20代後半から40代にかけての技術者は、まだまだ食べていかなければいけません。
何を自分の武器にするかで、今後10年をどうやって食べていくのかが見えてくると思います。


次回のうたまくらピアノ工房月間は11月の一か月の予定です。
また、詳しい内容ができ次第発表させて頂きます。
工房月間以外でも工房に来て下さい!

今回セミナーにお越しいただいた皆さまに、この場を借りて御礼を申し上げます。
ありがとうございました。

● COMMENT ●

シャンクの端っこ

お邪魔しました! もちろん内容は全然わかってないですけど、とっても楽しかったです!

頂いたニカワのついたシャンクの切り落とし。
あの後すぐに「趣味です」と言って習っている某大人のピアノ教室でのグループレッスンだったので、イキオイでクラスの皆さんと先生に軽く説明しながら配ってみました。
「そういえば、中ってどうなってるのかまったくわからない…」と覗き込むOLさん、
「やってみたい! やってみたい!」を連呼し続ける主婦さん、
「これをもらってもどうすればいいんですか」と困惑する先生、
リアクションが様々で、これまた面白かったですーーー。

趣味でピアノを弾いてる大人の方も、やっぱり中身が気になるみたいです。
ハンマー作りも興味があるみたい。
どうしましょうか。
何か面白いこと、できないかなー♪

ピアノ整備士の時代

 内容の濃いセミナーで、皆さん真剣そのもの。質問も活発で、大変参考になりました。
調律師=音合わせ、だけでなく、総合メンテナンス=ピアノ整備士が求められる時代が来ます。
 お客様に修理の話をすると、「調律師ってそんなこともするのですか?」とよく言われます。
 修理技術と、より良い状態に持っていく技術力。良くなるイメージをうまくお客様に伝える説明力。そして最後まできっちり仕上げる誠意と体力。
 「おもしろい時代」がやって来ます!その為には準備が必要です。これからもよろしくお願いします!
 

ぎざぎざ

ハンマーテールのバックチャックに接触するところのぎざぎざは、何の道具を使ってつけられているのですか?

Re: シャンクの端っこ

N様
長時間ありがとうございました。
あの切れ端で、そんなに盛り上がるとは。
何か良いアイディアがあれば、教えてください、何かできるかも知れませんので!

Re: ピアノ整備士の時代

Yさま
今から準備しないと間に合わないかも知れませんね。
本物を求める時代がやってきていますので、それに対応できるようにしておかなくては。
積極的に自分から動く、ということが大事だと思いますが、来られた方々から、そういう思いが伝わってきたことが、何より嬉しいと思いました。

厳しい現実も共感しながら、これからはこうするというという話にも盛り上がりがあって、大変有意義な時間でした。
ありがとうございました。
次、何しましょう?

Re: ぎざぎざ

うさま
ハンマーテールのぎざぎざは、メーカーで違いますし、時代でも違います。
私は、サンドペーパーの#40(スタインウェイのやり方)か中目の棒ヤスリのヤスリ目(ベヒシュタインのやりかた)を使って跡を付けています。
技術セミナーも面白いですよ。

端っこクイズ

ブログでクイズにしてみました。
http://piano.moe-nifty.com/blog/2011/08/post-f9d4.html

これから必要な技術から、セミナーの内容を依頼したいです

 これから増えそうなのに、一般の楽器店ではまだ対応しきれていない修理内容を考えてみました。
 1,鍵盤バランスホールの埋め木。穴あけ(蒸気や、太いキーピンに交換では限界がある)
 2,ダンパーフェルト交換と調整(交換より調整が難しい)
 3,UPの樹脂製ジャックの雑音修理(太いセンターピンが樹脂に入らないのでフレンジブッシングクロスの交換するしかないのか?)
 いずれも個人的に日常業務で気になっている内容です。これから必要になってくる技術はどんなものがあるのでしょうか?荒木さんや、他の方の意見が聞きたいです。

Re: これから必要な技術から、セミナーの内容を依頼したいです

Yさま
貴重なご意見ありがとうございました。
私もいくつか思うところはあったのですが、ダンパー関係は前から必要だと思っていました。
調整してあるピアノも本当に少ないので、短時間にきれいに調整できる事が必要ですね。
ダンパーフェルト交換も視野に入れて、検討してみますね。


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Author:arakipiano
38年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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