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オーバーホールの勧めVol.1 - 2012.09.10 Mon

オーバーホールの勧めVol.1

ようやく、武生国際音楽祭が終わり、普段の仕事内容に復帰しています。
武生国際音楽祭で使われたピアノの中で、オーバーホールが施されたピアノがありました。
年代は40年近く前のもので、しっかりと作られている時代のものです。
しかし、部品だけを右から左にへと替えただけのもので、ピアノという「楽器」の肝心な部分が欠落しています。
それはタッチの感触、音色のバランス、何よりもピアノを弾いていての満足感。

ピアノ修理という言葉には多少なりとも誤解を含んだ部分があります。
壊れたから直す、減ったから交換する、部分はもちろんですが、楽器を構成する部品なので、交換後の調整が必要になります。
その調整には熟達した技術が必要です。
要するに修理した(部品を交換した)後は必ず調整が必要になり、その調整は弾き心地に連結しているということです。

ここで、オーバーホールに関する項目を3回に分けて紹介していきます。

1.なぜオーバーホールをするのか?
2.どういう内容か?
3.いくらくらいかかるのか?


今回は1.なぜオーバーホールをするのか について書かせて頂きます。




今持っているピアノを使い続けたい、親から買ってもらった思い出のものであり、慣れ親しんだもの、簡単に買い換えられるようなものではない、という声をよく聞きます。
そして20~30年使ったら買い替えを勧められた、という話が付いてきます。
ピアノというのはそんなに次々と買い換えるものでしょうか。(常に新品を持っていたいという場合は別です)

「ピアノの寿命は」という問について語ることになるのですが、大体100年はもちますよ、とよく言います。
ピアノを製作した年代とメーカーで大きく違い、木の材料で作られている楽器なので、木材の良し悪しがあります。
素晴らしい木材を使っていた1920年代、工業製品として大量に作られた1970年以降、木の材料から樹脂に変わった時代。

ヨーロッパの一流メーカーは最低でも三世代もつように考えられて作られています。
それは吟味された材質、修理可能な作り方、部品だからです。
ヨーロッパでは200年以上前のピアノの部品を今でも調達できます。
しかし、何もしないまま100年使い続けることはできません。
必ず、消耗してオーバーホールをしなければいけない時期が来ます。

20~30年弾き続けて来たピアノに消耗部分が出てきます。
消耗部分とは、フェルト類、皮革類です。
そして、金属疲労により弦の音の伸びが無くなります。
部品で言うと、ハンマー、鍵盤関係のブッシングクロス、アクション内部の皮部品。
そして、弦。
それらを交換します。



では日本製はどうか。
昭和初期(1920年代)の楽器はそれはそれは素晴らしい木材で作られていました。
まだ芸術を表現する「楽器」としては完成されていませんでした。
戦後大量生産が始まる前まではいろんな見本となるピアノをコピーしてきました。
決して悪いことではなく、どんどんレベルが上がっていき、芸術を表現するための楽器に近づいて行きました。
しかし、大量生産時代が始まると大きく生産方式が変わります。
手作業でしっかり作っていたところを機械化させる、時間短縮のために作業を省く、調整の土台部分を短時間で仕上げる、など。

ピアノに限らず日本製品は世界中で認められています。
それだけ精度の高い物作りをおこなっているからです。
しかし「だいたい」のところでの精度で終えているため、もったいないです。

そこでオーバーホールをすることにより、土台部分からもう一度しっかりと「楽器」として作り上げることができます。
具体的には88鍵に渡りある部品の角度が段階的にガクっとガクッと変わっているところを徐々に自然に変わるように作り直したり、品質の良い消耗の遅い部品に変更したり、
プラスチックの黒鍵を黒檀に変えたりと、バージョンアップできるのです。
一流メーカーで施されている技術を投入(本物のピアノ作り)することができます。
日本製はそれにかなったピアノだと思います。
(ただし、樹脂でできているピアノに関してはその限りではありません。)

昔から使っている思い出のピアノを、今以上、新品以上の仕上がりに持って行き、これから先何十年と使っていくことができます。

オーバーホールの勧めVol.2.どういう内容か に続きます。

● COMMENT ●

Vol.0 予備知識

「オーバーホールってどういう言葉の意味?」という素朴な疑問に対して、
ウィキペディアの“オーバーホール”の記事をVol.0として眺めておくと、
荒木さんの記事の理解がより深まるように思いました。

あと、「食材がいくら良くても、料理が下手だとおいしいご飯にはならない」
そういうことですよね!

Re: Vol.0 予備知識

うさま
なるほど。
ウィキペディアの“オーバーホール”の記事は必要かもしれませんね。
機械の修理という意味だけではないですからね。
ありがとうございます。


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Author:arakipiano
32年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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