オーバーホールの勧めVol.2.どういう内容か - 2012.09.16 Sun
オーバーホールと言っても一言ではなかなか言い切れません。
どういう内容かを少し説明させて頂きます。
特にグランドピアノで多い内容になります。
国産ピアノにはより上質な部品を取り付けることが可能です。
輸入ピアノは同じ部品をヨーロッパより入れて、修理します。
アクション関係
消耗部分を交換して、調整していきます。
ハンマーヘッド(弦を叩く部分)
打弦によってフェルトに弦の跡がつき、弦溝がどんどん深くなって、新しい時は弦を点で叩いていたものが、消耗により線状でたたくようになり、
音色の変化がつきにくくなります。また断線の原因にもなります。

ハンマーシャンク(ハンマーヘッドがついている棒状の部分)
この部品は回転運動になるため軸の部分とその軸を受ける左右2カ所クロス状の部分があり、経年変化により動きにバラつきが出てきます。
酷い時にはガタになったり、左右の硬さが違ったり、動きが悪くなったりします。
革製の部品が取り付けられており、その皮を弾くたびにこするため、摩耗し変形してきます。
これら一体のハンマーシャンクを新しく交換します。

打撃音を揃えるためにシャンクの状態で石の上で叩いて打撃音を聞いて、音程順に並べ取り付けします。
ハンマーニカワ付け

鍵盤クロス関係


ピンに鍵盤が刺さっていて、上下運動のたびに金属製のピンとの間で摩擦が生まれ、その摩擦で貼られているクロスが摩耗してきます。
ピンが刺さるホール木部の調整も行います。
ピンとは程よい硬さでささっている感じがベストです。
象牙関係

漂白:昔のピアノで象牙が使われているものは長年の使用で、汗などを吸い込んだ象牙が黄色く変色します。薬品を縫っての漂白です。
剥がれ:白ニカワで接着されている場合が多いので、それが環境により剥がれてくる時期が来ます。
白鍵アクリル交換
ヒビ、欠け、変色、などで交換します。
白とアイボリーが選べます。



黒鍵関係
エボナイトから、高級木材黒檀への貼り替え。
一流メーカーの鍵盤は白鍵:アクリル 黒鍵:黒檀になっています。


ダンパー関係

弦の振動を止めるダンパーフェルトは、弦の上に乗っかっていたり、間に挟まっていたり、年月とともに、使用頻度とともに変形、硬化していきます。
弦の振動を止めるときに雑音を出したり、音が止まりにくいものが出たりするため、新しいフェルトに交換します。


ワイヤー折れ、ヒビのため交換
交換した後のダンパー付けの微調整などは大変難しく時間のかかる作業です。
アクション・センターピンの硬さ調整

これを一番簡単に直すためには、油を付けるのが早いです。
こういう直し方のピアノを数多く見てきましたが、年数が経つとこの油が逆に悪影響を招いています。
そういう場合はベンジンで油を洗い流し、
スプリングが当たる部分の木部の経年変化 (写真はしばらくお待ち下さい)
グランドピアノ特有の変化ですが、常にある一定の強さでスプリングが木部を押さえつけているため、押さえつけられている部分が凹んできます。
しかし、その部分はスプリングと木部の上下運動で擦れる場所なので凹んでいるときしみが出たり、より大きな摩擦となってタッチに大きく影響を及ぼします。
凹みを金属の棒でなめし、無くします。
他のフェルト、皮部品の消耗があればそれに見合う交換修理
大きく調整は伴わないのですが、接着剤の選択、フェルトの質などで最終のタッチに影響します。
鉛調整


ほとんどの国産メーカーがしっかりとおこなっていない調整のひとつです。
国産メーカーでは鍵盤の重さが酷いものは約20gの誤差があります。工場の製作段階でこういう状態なので、経年変化ではもっとひどくなっていきます。
これらをヨーロッパメーカーのように1つずつ、製造工程で何度も正確に測って重さを揃えていきます。
弾きやすい、これは重さが揃っているからです。
ボディー編
弦の交換

金属疲労により、音の伸びがなくなります。
断線も出てきます。
チューニングピンの交換

弦を交換する際、弦が巻かれているピンを現行サイズより太いものに交換します。
オーバーホールでの交換は2~3回が限度となり、それ以上の場合はピンが刺さっているピン板ごとの交換です。
響板修理
これは状態が悪い場合になります。



割れ。

響板塗料の不良。年数が経って塗料が変色したものです。
クラウン(反り)が無くなると弦の響板を上から押さえつける圧力が無くなるので音が伸びなかったり、音色が悪くなったりすると響板ごとの交換か、ピアノの寿命となります。
外装塗装
以前の塗装の状態により、全塗装を行うか、部分塗装か、全くやらないか。
オプションとして黒いピアノを木目に変えたり、白に塗り替えたりも可能です。

最初は黒

剥離、着色

ウォールナット仕上げ
金属部分の磨き
ペダル、ロゴ、ヒンジ、ネジ、いろんな所に真鍮が使われており、そのくすみ、変色を磨き上げ新品のようにします。

2本ペダルからソステヌートペダルの3本仕様に交換




最終新品よりレベルの高い状態に仕上げます。
どういう内容かを少し説明させて頂きます。
特にグランドピアノで多い内容になります。
国産ピアノにはより上質な部品を取り付けることが可能です。
輸入ピアノは同じ部品をヨーロッパより入れて、修理します。
アクション関係
消耗部分を交換して、調整していきます。
ハンマーヘッド(弦を叩く部分)
打弦によってフェルトに弦の跡がつき、弦溝がどんどん深くなって、新しい時は弦を点で叩いていたものが、消耗により線状でたたくようになり、
音色の変化がつきにくくなります。また断線の原因にもなります。

ハンマーシャンク(ハンマーヘッドがついている棒状の部分)
この部品は回転運動になるため軸の部分とその軸を受ける左右2カ所クロス状の部分があり、経年変化により動きにバラつきが出てきます。
酷い時にはガタになったり、左右の硬さが違ったり、動きが悪くなったりします。
革製の部品が取り付けられており、その皮を弾くたびにこするため、摩耗し変形してきます。
これら一体のハンマーシャンクを新しく交換します。

打撃音を揃えるためにシャンクの状態で石の上で叩いて打撃音を聞いて、音程順に並べ取り付けします。
ハンマーニカワ付け

鍵盤クロス関係


ピンに鍵盤が刺さっていて、上下運動のたびに金属製のピンとの間で摩擦が生まれ、その摩擦で貼られているクロスが摩耗してきます。
ピンが刺さるホール木部の調整も行います。
ピンとは程よい硬さでささっている感じがベストです。
象牙関係

漂白:昔のピアノで象牙が使われているものは長年の使用で、汗などを吸い込んだ象牙が黄色く変色します。薬品を縫っての漂白です。
剥がれ:白ニカワで接着されている場合が多いので、それが環境により剥がれてくる時期が来ます。
白鍵アクリル交換
ヒビ、欠け、変色、などで交換します。
白とアイボリーが選べます。



黒鍵関係
エボナイトから、高級木材黒檀への貼り替え。
一流メーカーの鍵盤は白鍵:アクリル 黒鍵:黒檀になっています。


ダンパー関係

弦の振動を止めるダンパーフェルトは、弦の上に乗っかっていたり、間に挟まっていたり、年月とともに、使用頻度とともに変形、硬化していきます。
弦の振動を止めるときに雑音を出したり、音が止まりにくいものが出たりするため、新しいフェルトに交換します。


ワイヤー折れ、ヒビのため交換
交換した後のダンパー付けの微調整などは大変難しく時間のかかる作業です。
アクション・センターピンの硬さ調整

これを一番簡単に直すためには、油を付けるのが早いです。
こういう直し方のピアノを数多く見てきましたが、年数が経つとこの油が逆に悪影響を招いています。
そういう場合はベンジンで油を洗い流し、
スプリングが当たる部分の木部の経年変化 (写真はしばらくお待ち下さい)
グランドピアノ特有の変化ですが、常にある一定の強さでスプリングが木部を押さえつけているため、押さえつけられている部分が凹んできます。
しかし、その部分はスプリングと木部の上下運動で擦れる場所なので凹んでいるときしみが出たり、より大きな摩擦となってタッチに大きく影響を及ぼします。
凹みを金属の棒でなめし、無くします。
他のフェルト、皮部品の消耗があればそれに見合う交換修理
大きく調整は伴わないのですが、接着剤の選択、フェルトの質などで最終のタッチに影響します。
鉛調整


ほとんどの国産メーカーがしっかりとおこなっていない調整のひとつです。
国産メーカーでは鍵盤の重さが酷いものは約20gの誤差があります。工場の製作段階でこういう状態なので、経年変化ではもっとひどくなっていきます。
これらをヨーロッパメーカーのように1つずつ、製造工程で何度も正確に測って重さを揃えていきます。
弾きやすい、これは重さが揃っているからです。
ボディー編
弦の交換

金属疲労により、音の伸びがなくなります。
断線も出てきます。
チューニングピンの交換

弦を交換する際、弦が巻かれているピンを現行サイズより太いものに交換します。
オーバーホールでの交換は2~3回が限度となり、それ以上の場合はピンが刺さっているピン板ごとの交換です。
響板修理
これは状態が悪い場合になります。



割れ。

響板塗料の不良。年数が経って塗料が変色したものです。
クラウン(反り)が無くなると弦の響板を上から押さえつける圧力が無くなるので音が伸びなかったり、音色が悪くなったりすると響板ごとの交換か、ピアノの寿命となります。
外装塗装
以前の塗装の状態により、全塗装を行うか、部分塗装か、全くやらないか。
オプションとして黒いピアノを木目に変えたり、白に塗り替えたりも可能です。

最初は黒

剥離、着色

ウォールナット仕上げ
金属部分の磨き
ペダル、ロゴ、ヒンジ、ネジ、いろんな所に真鍮が使われており、そのくすみ、変色を磨き上げ新品のようにします。

2本ペダルからソステヌートペダルの3本仕様に交換




最終新品よりレベルの高い状態に仕上げます。
● COMMENT ●
分解・組み立て
Re: 分解・組み立て
うさま
世代代わりもそうですが、一番の目安は使用頻度です。
年数が経っていても使われていなければ、十分そのまま使っていけますし、たった10年でも一日何時間も弾くピアノだと、オーバーホールとまで行かない修理は必要になってきます。
これらができる、耐えうるピアノが対象となりますね。
世代代わりもそうですが、一番の目安は使用頻度です。
年数が経っていても使われていなければ、十分そのまま使っていけますし、たった10年でも一日何時間も弾くピアノだと、オーバーホールとまで行かない修理は必要になってきます。
これらができる、耐えうるピアノが対象となりますね。
修理のオンパレードですね。
以前極悪な修理がされていたピアノの記事(3つほど前のブログ)がありましたが、修理・調整する技術者は現状のピアノの状況を把握して、どの様な目的で何の修理・調整をするのか、その結果ピアノがどの様に変わるのか、正しい見通しを持って作業しないといけませんね。そして、ピアノの使用者に作業前の状況の説明をして、作業後のピアノの変化を感じて納得して頂く事が大切だと思います。
弾きやすい鍵盤で気持ちの良い音を(きれいなピアノで)演奏できる様に・・・最終的には感性、感覚によって評価される仕事の様に思います。
弾きやすい鍵盤で気持ちの良い音を(きれいなピアノで)演奏できる様に・・・最終的には感性、感覚によって評価される仕事の様に思います。
Re: 修理のオンパレードですね。
べっちさん
弾く人は物差しを当てて検査しませんから、おっしゃるように感性で評価します。
その感性の根源になる部品選択、修理作業をしっかりとやらないと単純に「弾きにくい!」とみなされるわけですね。
技術を磨き経験を積んで行きましょう!
弾く人は物差しを当てて検査しませんから、おっしゃるように感性で評価します。
その感性の根源になる部品選択、修理作業をしっかりとやらないと単純に「弾きにくい!」とみなされるわけですね。
技術を磨き経験を積んで行きましょう!
トラックバック
http://arakipiano.blog43.fc2.com/tb.php/541-690535f4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
ピアノの寿命は3世代。弦の張替え・ピン交換も2、3回が限度。とすると、世代代わりの時に、オーバーホールして引継ぎと言う感じでしょうか。
PS.
白ニカワって、因幡の白兎から取ったニカワ(笑)じゃなくて、染料で染めるんですよね。
この前、勉強させて頂いて良かった!