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ねこふんじゃった!? - 2012.09.20 Thu

先日あるお客様の調律に伺った際、昨年と全く同じ鍵盤に対する症状を言われました。
「中音のある部分の鍵盤が急に重くなって、普通に弾けなくなる時があります。
でも一回弾いた鍵盤はその後は普通に戻るのです。
一日に何回もあるわけではなく、今日あっても明日は無い、でも次の日に出てくる、という具合なのです。」

1年前も言われ、なんとか直したつもりだったのですが、結果直っていないということで、ちょっとがっかりでした。

今回は原因を見つけ直すぞ、という気持ちでピアノをじっくり見ました。

すると、おかしな個所に気が付きました。

高音の方のダンパーが歪んでいるのです。
P9190001.jpg




お部屋から出ていかれた先生をもう一度お呼びして、心当たりが無いか聞いてみました。
「先生、この場所がズレて動いているのですが、何かお心当たりは無いですか?
ネジはしっかり締まって簡単にダンパーはズレないようになっているようですが、
現代音楽で弦を触ったりとか、掃除をしていてこの部分を触ったりとか?
この部分がズレるというのは無理やりダンパーを持って動かさない限りズレてきません。」

「いいえ、一切ダンパーなど触ることはありません。」
ますますわからなくなってきました。
「あっ、もしかしたら家の猫かもしれません。よくピアノの上で寝たり、中に入って歩いたりするのです。
気をつけているのですが、部屋のドアも何とかして開けて入り込むのです。
怒れば暴れて余計に酷いことになると思い、出てって!と叫んで追い出します。」

「なるほど、分かりました。このズレは直しておきます。」
そして、調律に移っていきました。

調律中に鍵盤が重くなるという症状の事を考えていると、ふと思い立ったのです。
そうだ、原因はねこふんじゃった、か!
猫がピアノの中、ダンパーの上を歩いて行くのです、と先生が言われたのを思い出しました。
P9190004.jpg
黒いダンパーが獣道あらず、猫の道になっていたのです。
譜面台の横からダンパーに乗って、次の譜面台までそろ〜っと渡るのでしょうか。


ダンパーは音域でフェルトの形状が違います。
P9190002.jpg
右:中音の低音側
左:中音から高音にかけて

特に中音の低音側、弦が長い音域10鍵ほどはフェルトの形状がW型で、上から押しこめば弦の間に入っていきます。
P9190003.jpg

入っていくと、くさび状なので、しっかしと食いこんでしまうことになり、それを鍵盤で持ち上げようとするとかなりの力を入れないとダンパーは持ち上がりません。
一度持ち上がると普通に戻ります。
他の形状のフェルトの音域ではこういうことは起こりません。
中音低音側、弦の長い部分だけです。

誰もいないピアノの部屋に猫がドアを開けて入って、ピアノの上、つまりダンパーの上を歩いたのです。
歩いた後の中音部分W型フェルトのところだけが食い込んで、その鍵盤だけがダンパーを持ち上げる時に重くなった、ということがわかりました。
よく見ると、猫の毛もいっぱい落ちています。

ご家族のみなさんに話をして状況を再現すると、大笑い。
「そう、この鍵盤の感触でした!」
片付ける時に、屋根は閉めなくても、楽譜が乗っていてもよいので、せめて譜面台を倒せば、ダンパーは隠れるのでその上を歩くことはできなくなると思います。これからはそうして下さい。お願いします!」


「ねこふんじゃった」ではなく「ねこがふんじゃった」ですね、と私の作業のミスかもしれなかった汚名も晴れました。
まさか猫が原因で弾きにくかったとは!

● COMMENT ●

猫道

面白いお話ですね!
ダンパーは、猫にとって爪の掛かり方とか肉球の乗り方がお気に入りだったとか。

猫の気持ちになってみると・・・

う~ん。是非その犯人(犯猫)の顔写真も見てみたかったですね。
ピアノの中を猫が歩くなんてけしからん!と思ったりもしますが、なるほどダンパーを横から眺めた写真を見ると猫が歩きたくなった気持ちもわからなくもないですね。
でも、決してピアノの中やピアノの上をトイレと間違ってはいけません。
その結果大変なことになってしまったピアノに何回か出会った事がありますので・・・。

Re: 猫道

うさま
猫道、猫になったらわかるのかもしれません。
お客様は猫を愛していらっしゃるので、その気持ちを考えつつ解決策を練りました。
あのフワッと動くダンパーが気持ちよいのかも。

Re: 猫の気持ちになってみると・・・

べっちさん
わたしも途中で用を足したピアノに何度か遭遇したことがあります。
大変な修理になりました。
猫道の途中の厠になっていたら、、、これだけは勘弁してほしいですね。
でも猫の習性は面白いですね。


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Author:arakipiano
32年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
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