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ディアパソンの発見 - 2013.02.05 Tue

12月に伺ったお客様、S様のピアノ、ディアパソン。
中古でピアノを買われ、状態が悪いので、アクションの預かり修理となりました。
その修理が終わり納品調整に伺いました。
P2030017.jpg



まず、なせディアパソンを選んだか?

1.マイナーブランドだけれども、しっかり作っているところで、かつ安いから
2.1980年製だから(この時代、他の物もまだしっかり作っていた)
3.大手ではない小さい所ならではの良さがあると思ったから

選び方になるほど、と思いました。

まず、S様は若いころロックのドラマーをされていたとのことで、その時にいろんなドラムを見てこられ、最終購入は見た目も作りも値段も超一級の中古のドイツ製だったとのこと。
1980年代前半までアメリカ製は金属の成分配合が優れていて、それによって音色だけは良かったが作りは雑だったとのことです。
ドイツ製は全てにおいて優れていたそうです。
ピアノ選びにも参考にされたそうです。

そして、このピアノを最初に見た調律師は購入したばかりの楽器店から来たのにいきなりオーバーホールが必要なピアノです、レンナーハンマーに変えましょうと言って帰ったとのこと。
見るところがずれたら、全てがズレてしまう例でした。





確かにディアパソンはカワイの傘下に入っていますが、独自な考え方でピアノを作っていました。

P2030014.jpg

オオハシ・デザイン
P2030015.jpg

あまり触る機会が無く、かつ状態の良いディアパソンを見たことがありませんでした。
しかし、今回いろいろ悪いと言われていたピアノのアクションを引き取り作業をしていくたびに、どんどんすごいことに気が付きました。

高級機種というわけではないのに、レンナーハンマーが取り付けられていました。
しかも、ニカワで。
30年前のピアノですが、ヤマハもカワイももうニカワは使っていません。
P2030013.jpg

唯一難点はタッチが重い、ということです。
なぜか?
ハンマーを含め、鍵盤の上に乗っているアクションパーツの重量が重いのです。
その重さをスプリングの力で軽減している昔の構造のアクションです。

12月の時に重さを測った時点で70g。
動きの悪い部分もありましたが、それを差し引いてでも、かなり重いものでした。

スプリングを取ってしまい、アクションパーツの重さを鉛で調整しました。
P2030010.jpg

上手くバランスが取れた重さは56g。ちょっと重めですが、弾き心地が断然良くなりました。
P2030012.jpg


整音も弾力のあるレンナーハンマーで、フェルト厚もしっかりと残っています。
硬めのフェルトに針を入れ、ほぐします。


昔はドラマー、今はバッハ。
デザイナーというお仕事もピアノ選びから来るこだわりと、的を得た選び方に納得してしまいました。
そして、しっかりと調整に時間とお金をかける。
今回はいろんな発見のある面白い修理でした。
何より、S様に気に入っていただけてホッとしています。

● COMMENT ●

いきなり?

中古車を買って初回の点検に出したらオーバーホールが必要と言われたら、お前の処はどういう車を売っているの?って突っ込みたくなる話ですよね…。
もう少し鉛を積み足して鍵盤を軽くすると、別のところに無理がでるのでしょうか?

( ´∀`) ありがとうございました

そうそう、鉛調整56gだという鍵盤ですが、弾いていてまったく不自由は感じません。アクションの動きそのものが良くなり且つ鍵盤の重さが揃っているからなのでしょうね。

思い返せば、ドラムセットの調整でいちばん重要なのが、いすの高さ、そしてバスドラムのペダルでした。
(ペダルトルクそのものの重さ・軽さは好みによりますが)各部の動きにデットポイントが生じないように調整したものです。

ようするに、アクションバランスが良いピアノだと、鍵盤トルクの重さは演奏の支障そのものにはならないのだと、あらためて実感いたしました。
荒木さんのクラフトマンシップに感謝!

Re: いきなり?

うさま
軽くすればするほど、鍵盤の上がりが悪くなります。すぐ下がるのですが、ゆっくり上がるという逆転現象がおきます。手に吸いついてこない。
軽くなるとおもいきや、コントロールしにくくなり「弾きにくさ」となるということです。

Re: ( ´∀`) ありがとうございました

ひこにゃんさん
そうなんです。揃うということが弾きやすさになるということです。多分60gでも問題ないかも。
揃っている国産ピアノは高級機種ぐらいでしょうか。
大変な作業でしたが、楽しく作業させて頂きました。
ありがとうございました。(帰り彦根を通りましたよ!ひこにゃんや〜)


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Author:arakipiano
38年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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