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ピアノレンタル - 2022.10.08 Sat

ピアノが設置されているところにあえて現代曲をやるためのピアノを用意する。
ジョン・ケージの「ソナタとインターリュード」という曲をピアニスト北村朋幹さんが演奏するために用意しました。
この曲のプリペアード・ピアノとはピアノの弦と弦の間にボルト、ワッシャー付きボルト、プラスティック片、ゴムを楽譜に書かれている指示通りに挟んでミュートします。
ミュートするとその弦を叩いた音はまるで打楽器。
金属が挟まっていたらジャリーン、ジリジリ。
ゴムがあるとポコポコ。
ペダルを踏んで響かせて低音を鳴らすとお寺の鐘の音ゴーン。そしてピアノの実音とまざって神秘的な楽器となります。

文字では書き表せません。(写真はNGなので載せられません。)



この曲が書かれたのが1948年のアメリカ。ジョン・ケージという人はこの世界を代表する有名作曲家です。
前衛的な曲だった当時から70年が経つとそれはもう現代曲の古典になってしまうのでしょうか。

ここで、改めてピアノのことに視点を移すと、現代曲をするためには専用のピアノが必要なのかということですが、難しい問題なのです。



ピアノにダメージを与えると他の曲が弾けない、長持ちしないということになり、管理するホールや持ち主がそれに対して使わせないという判断になります。

では何を持ってダメージなのか。
弦に傷をつけた、弦が切れた、音が止まらなくなった、衝撃を与え何かが欠けた、外装、鉄骨に傷が入った。



過去にすごい曲がありました。
最高音の鍵盤を連打し、楽譜に出されている指示は
「弦が切れるまで連打すること。」
「切れたら次の音に移り連打をやめないこと。」
これはもうピアノを壊す行為でした。
3本の弦が切れ、負担はホールが行いました。
こういう曲ができて、公共のピアノで起きてしまうと、その場にとどまらずいっぺんに悪い話が広まってしまいます。
現代曲の内部奏法があるものは全てダメと。

難しい問題です。



今回、1年前から相談を受けて曲に見合うピアノを用意して会場に運びました。
そしてこのような取り組みが可能になったのは会場の理解、マネジメントの動き、演奏者とピアノ技術者との信頼があってのことです。
ひとつでも噛み合わないと実現は難しいでしょう。

今回はピアノに対しては最高音部ダンパーが邪魔になるのでヘッドとレバーごと外したり、音色の追求でプラスチック片をカットして幅を変えて倍音をコントロールしたり、叩き続けると挟んだものがずれてきたりするのを止める工夫をしたり、作曲者の意図とすることへの追求に対して今できる最高のことを作り上げていきます。

北村さんに思いっきり演奏ができるようにできました。



70年経っても残っていく曲とはそれを演奏する演奏家、それを理解する関係者、聴衆、そして対応できる楽器と対応できる技術者があって成り立ちます。

コアな世界かもしれませんが、多様性の現代において必要なことなのでしょう。
対応できる幅を持っていきたいと思います。

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Author:arakipiano
38年ピアノ技術者として世界中のピアノを見てきました。
ピアノがピアノだけで終わらない、人とのかかわりの中で、心に残るいろんな出会いをご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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